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この街・あの人・どんな顔      2001/10/10掲載

染織作家  桂川 幸助
かつらがわ こうすけ
1950年、東京・日本橋生まれ。
1973年、多摩美術大学美術学部デザイン科染織デサイン専攻卒。同大学染織研究室を経て1979年、フランス アンジェ州立美術学校留学。1年後帰国。研究室に戻り、染織作家として作品を発表。
1975年、全日本染織展の入賞を皮切りに各賞受賞。2001年、第87回光風会杉浦非水記念賞を受賞。現在、多摩美術大学非常勤講師。光風会会員。1998年、津久井の自宅近くに工房・手織教室「タピスリー桂川」を開設し、夫人と共に糸染めから手織までを指導している。

染織の心の原点。それは一枚の絵から始まった…


1991年『カンナ』 160×120cm


2001年『奏風』160×120cm

 

 

 

 静かな津久井の山間にあふれる笑い声。ここは工房・手織教室の「タピスリー桂川」。手織りについて丁寧に教えているのは桂川幸助さん。染織作家としてタピスリー(綴織の壁掛け)作品を制作すると共に現在、手織と草木染めの指導をしている。


 それは一枚の絵がきっかけだった。中学校の美術の時間、校庭の木の写生をすることになった。他の生徒が地面に木の幹と葉というごく当たり前の絵を描く中、一人異質の才を見せた。「下の幹などなくて木の枝っぷりだけを画面いっぱいに描いた」というその絵は本人が知らぬ間に区の展覧会に出品され、「賞をもらった記憶がある」という。
 元々、ゴム動力のプロペラ機作りが好きな工作少年で絵はあまり好きでなかった。が高校3年の夏休み頃ようやく進路先として芸術方面を意識するようになり、美大に入る。
 併願で、「たまたま選んだ」デザイン科染織デザイン専攻。実は生地問屋で働く父の姿もあって「親近感があった」。2年次に染めと織りの基礎を学ぶようになるが、元工作少年としては「経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が交差して形になっていく点が魅力」で、織りのコースを選んだ。3年次になって技術的な基礎部分、平織や綾織等の織物を織る毎日。そこで綴織に出会った。

綴織に惹かれ
 綴織は経糸を土台にして色の異なる緯糸を通し、自由なパターンを織り出すことができる。主にヨーロッパで城の内部の壁面装飾品としてタピスリーが広まっていった。
 卒業制作は花を題材にしたタピスリー。卒業を控え、就職か迷ったが大学の研究室に残り、研究助手を続け、染織作家の道を目指すことにした。さらに本場で学ぼうとフランス留学を決意する。
 フランスでは技術や歴史的背景等学ぶ中、作家としての土台を築いた。そしてフランスの家庭で日常的に飾られているタピスリーを目にして「いずれ日本でも広まる…」と確信した。
 帰国後、研究室勤務の傍ら染織作家としての地歩を着々と固めていく。

染織作家として
 初期の作品では花の輪郭を際立たせる作風だったが、後に糸の濃淡を利用した色鮮やかな作品へと移行していく。
 81年の日本工芸展の入選作では縞の混色を利用して、新たに風景までも表現する。再び花に戻ると91年の『カンナ』では葉の色を透かして裏側の赤い花を引き立たせた。
 また、97年『輝』では花の要素の中から色彩を強調、新境地を開いた。この頃から作家として認知されるようになり、制作の依頼も多くなった。
 同時期に花の周りに虫が飛ぶ軌跡を表現した作品を発表。さらにそのイメージを膨らませて風を表現した『奏風』を発表。今年4月には杉浦非水記念賞を受賞した。
 花をモチーフにし、次々と表現スタイルを変えながらイマジネーションあふれる作品を発表する桂川さん。今も中学時代に描いた一枚の絵が心の原点にあるのかもしれない。

手織教室で
 現在、津久井の教室では主婦層を中心とした27名の生徒に手織と草木染めを教えている。まずは卓上織機を使ってショールやマフラー等やさしい物から織り始める。ひとり一人のペースに合わせて…。教室に通う人の多くは自然志向もあり、サクラ・クリ等身近な草木で糸を染め、より親しんでもらえるようにしている。
 今も、手作りにこだわる気持ちに変わりはない。


特注の織機で、ウールの糸を織っていく。
ここから、ぬくもりのある作品が生まれる。

お気に入りの作品づくりに真剣な眼差し

 

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