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この街・あの人・どんな顔      2003/09/10掲載

知的障害を持つ子の親の情報ネットワーク「ヴィーナスネットワークさがみはら」 代表
関 範子
せき のりこ

1949年生まれ 相模原市東橋本在住。
応用行動分析学の浅井哲朗氏の講演会で、知的障害を持つ子どもへの理解と指導法を学んだことがきっかけで、浅井氏の講演や指導会を相模原市でも開きたいという思いから、平成11年「ヴィーナスネットワークさがみはら」を立ち上げる。

障害を「障害」でなくしていくこと。それが大切なんだと思います。

 

 知的障害を持つ子どもの親や学校教諭が専門家による指導を受けたり、勉強会や情報交換を行う場をつくろうと、関さんが設立した「ヴィーナスネットワークさがみはら」は今年で設立5年目を迎える。


 関さんの二人目の子ども、長男の日朗くんが「自閉的傾向がある」と言われたのは、2才の頃。それまでは「ちょっと変わった子だ」と、「個性」程度にしか気に留めていなかったので、突然突き付けられた聞きなれない言葉に「壁にピンで張り付けられたような」ショックを覚えたという。「なんでウチの子が…」「そんなはずはない」と悩んだり、「自分のせいだ」と苦しんだりもした。

本当の「障害」
 専門機関に相談したりしていたが、ある日、障害を持つ子の親に向けた講演会が横浜で開いているのを知り、参加してみた。講師は、行動分析学に基づく指導を行っている浅井哲朗先生だった。
「『障害』とは、その人だけが持っているものではなく、その人を取り巻く環境との間にある。そして、一番の『障害』は、周囲の『白い眼』だ」という言葉を聞き、目からウロコが落ちた。周りの対応を変えていくことで『障害』は障害ではなくなるというのだ。ほっとさせられ、勇気づけられた。

相模原で講演を
 浅井先生のセミナーを相模原でも開き、同じような障害を持つ子どもの親と共に、勉強したり力になれたらと企画し、淵野辺で開催した講演会には約50人の参加者が集まった。講演後のアンケートには、関さんと同じく「目からウロコが…」という声も寄せられた。
 以後、月に一度、場所も橋本公民館に移して浅井先生を招いての勉強会を開いている。回を重ね、今月で37回目となる。会員は現在25名。県内だけでなく、都内や浅井先生在住の静岡からの参加もある。始めた頃は障害児の母親がほとんどだったが、最近は養護学校や支援学級の教諭の参加がその数を上回るようになった。どんなに親が頑張っても、学校では現場の教諭に任せることになる。教諭の参加は、親としても大いに歓迎するところだ。
 昨年は、相模原市教育委員会の後援と上溝中学校の協力も得て、知的障害児の集中指導キャンプを行った。子ども1人に3人の指導者が付き、親たちが提起した「問題」の改善と、トレーナーとして参加した先生方の臨床技術修得を目的としたものだ。静止して待つということができない「多動」傾向が改善されるなど、参加した全ての子どもに成果があった。
「今後は、お父さん方だけの勉強会も企画したいと思っています」
 会に誘っても「ウチはこのままでいいんです」と断る人もいる。一人で全部抱え込んでしまって、がんじがらめになってしまうのではと心配になる。自分自身もそこに陥ったこともあったが、浅井先生の行動分析学に出会って、発想の転換を学び想像力を鍛えられることで状況は徐々に変わった。勇気が湧いた。そのことを「100 人に1人生まれると言われている知的障害児を持つ親や指導者へと伝えていきたい」と関さんは言う。彼女の活動はまだまだ発展していくようだ。

周りを育てる子
 そんな彼女の息子、日朗くんは現在中学3年生。日朗くんの歳の離れた姉である、長女もいる。弟が「自閉症」と分かった頃、姉は高校生。本といえば「絵のいっぱい描かれた本」しか読まなかった娘がある日「文字しか書いていない本」を読んでいて、関さんは驚いた。それは「自閉症」に関する専門書だった。
「日朗が周りを『育てて』くれているんだなぁ…って思いました。夫婦ともに我慢強くなって、簡単に物事を諦めないようになりましたよ」
 日朗くんのことを話す時の関さんは目を輝かせ、とても楽しそうだ。
「『子供との闘い』という面はもちろんあります。もっと重い障害を持った人のことを考えると『そんなに思い詰めないで』と言うことも辛くなる。でも、息子を見ていると『存在自体が幸せ』。そういう子に恵まれたことを幸せと思えるんです」
 はじめに「なんでウチの子が…」とショックを受けた。まずその現実を受け入れることが必要だった。しかし本当に大切なのは、その「次」に進むことなのだと、関さんの笑顔は語っていた。

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